May 9, 2022
PSN 5th -The LEGACY- 制作後記
序文
2022年4月9日午後8時、PSN 5th -The LEGACY- を公開した。
おかげ様で国内外からご好評を頂けており、公開から20日間で5000回再生、1か月目の本日5月9日には5555回再生を達成した。
PSNは海外のスピナーの方々からもご覧頂くことが多い動画シリーズなので、
本特設サイトでは基本的に英語を併記するようにしている。
しかしこの後記については文章量が多いため、また翻訳間違いを避けるために、日本語のみの記載とさせて頂く。
PSN FINALの再始動
2010年に制作を行ったPSN FINALは頓挫してしまった。
以来10年以上、心のどこかでペン回しやPSNについて引っかかったままだった。
これをもう一度作ろう、と決心したのは2021年7月のことだった。
この詳細な経緯についてはKayさんとの対談動画を参照頂きたい。
その後、Itezaさん、Kayさんにご協力をお願いし、PSN制作委員会を立ち上げた。
お二人を選んだのは、動画制作に関する知識や経験は勿論のこと、界隈への影響力の強さ、
何よりもPSNシリーズへの理解度が十分に深いと感じたためだ。
結果的に、企画の立ち上げ段階からこのお二人に協力して頂いたことが最適解であったと自信を持って断言できる。
PSN 5thの方向性
PSN FINALを再始動するにあたり、その方向性をどのようにするか、という点が重要だった。
そもそもPSNとはどういった動画だったのか?
視聴者はPSNの何に魅力を感じていたのか?
議論の末に我々は、PSNとはペン回し黎明期を代表する動画であると同時に、
時代の最先端を走っていた動画である、という2点に行き着いた。
しかし、PSN 4thから15年も経った今、この2点を1つの動画にまとめることは非常に厳しい。
黎明期の象徴性を優先するなら、当時のスピナーを呼ぶことになるが、
最先端の技術を優先するなら、現在のスピナーを呼ぶ必要がある。
これらを一緒の動画にまとめるのは難しいのではないか、というのが最初に立ちはだかった問題だった。
そこでItezaさんから、前後編2つの動画を作ることが提案された。
黎明期を体現するPSNと、最先端を体現するPSNを別々に作るというわけだ。
このアイデアは素晴らしかった。2つのPSNらしさを両立することができる。
タイトルは「PSN 5th -The LEGACY-」「PSN 6th -The FINAL-」とした。
メンバー招集
そんなPSN 5th -The LEGACY- を制作するにあたり最も高い壁となったのは、何といってもこの豪華すぎるメンバーの招集だった。
三人で協議を行い、ペン回し黎明期を象徴するに相応しいメンバーを挙げていくところから始めた。
前回のPSN FINALにご招待していた方々や、2000年代に活躍した方々、
PSNの過去作に出演した方々を中心に、国内外を問わずざっと40名以上をリストアップした。
ここからが大変だった。
まず、出演候補者たちの大半は連絡をとること自体が難しい。
私は元々オフ会への参加も殆ど経験がなく、会って話をしたことのあるスピナー自体が数える程度しかいなかった。
加えて候補者たちの活動時期の古さ故に、今や絶大な影響力を持つItezaさんやKayさんですら連絡先が分からない方が大半で、
出演交渉は一層困難を極めた。
そこで、顔の広さに定評のあるUszakuさんに仲介を依頼し、出演者候補者のうち数名と連絡がとることができた。
彼をSpecial Thanksに挙げさせて頂いているのはそういった理由だ。
このような連絡と交渉の末に、ご出演頂けたのが今回のメンバーというわけである。
寸評と総評
それでは、出演者の皆様の寸評に移ろう。
・KUNEKUNEさん
トップバッターはPSN 2nd、3rdに続いて3回目の出演となったKUNEKUNEさんである。
彼はbonkuraさんに強く影響を受けた一人であり、フィンガーパスを極め、京都大学に入学するという、
公私ともに筋金入りのbonkuraさんフォロワーだ。
今回はその高精度のフィンガーパスを遺憾なく発揮され、動画のトップバッターとしてこの上なく期待感を高めてくれた。
彼とは同郷の同学年であり、高校生の時分にはよくお会いしていた。時勢が落ち着けばまた飲みに行きたいものである。
・337さん
続いては337さん、通称大臣だ。
編集者として黎明期のペン回し界を支えた立役者であり、彼がいなければPSNもJapEnも始まらなかった。
PSN FINALが企画倒れとなって以来ギクシャクしていたのだが、今回こうした形で解消されてよかった。
彼のPSNシリーズでのスピナーとしての出演は2nd以来なのだが、彼の癖がなくスマートなペン回しを再び見ることができた。
ちなみにペンはケイリミだ。Kayさんの元に注文が入った時は何の前触れも予告も無かったため、大いに驚いたそうだ。
・G-Ryzer(「・ω・)「さん
PSN 2nd、3rdに続いて3回目の出演である。
技術、撮影環境、ペン、名前のいずれも一見して彼と判る個性があり、海外認知度は昔から高かった。
ちなみに出演を依頼した時、回せるペンが手持ちにないということで、丁度発売直後だったケイリミ黒をプレゼントさせて頂いた。
彼の特徴とも言える、アラウンド系で見せる大胆な手の動きは健在であり、ケイリミとの相性もかなり良かった様子だ。
・RYOさん
ペン回しの歴史を変えた改造ペン、Dr.KTの開発者として有名なスピナーだ。
PSN 4thに続く2回目の出演だが、彼の本領とも言える綺麗な円軌道を描くペン回しは健在である。
既に引退されているにも関わらず、癖が無く見やすいオーダーの構成、黒背景に映えるDr.KTの配色、
しっかりと準備が整えられた撮影環境などにより非常に見やすい動画になっている。
このように要望に対し120%で応えてくれる姿勢は流石と言うほかない。
・Banzさん
黎明期のフランスにおける名スピナーの一人である。
PSN 4thではその長尺フリースタイルで話題となったが、
World Tournament 2007で第四位に輝いた彼の技術の高さは疑う余地もない。
今回も当時の香りが残る、Banzさんらしい安定感のある技を見せてくれた。
ちなみに、仮撮りの動画では別のペンをご使用されていたのだが、私の我儘で彼の代名詞のGrip Avaireにして頂いた。
結果として、やはり4thの気配を匂わせるGrip Avaireで良かったと思う。
・ps-728
私、ps-728である。
これだけのメンバーを集めておいて、主宰者のペン回しが動画全体を台無しにしてしまうわけにはいかないと思い、かなり力を入れた。
今までのPSNシリーズでも普通スタイルとスタンディングの2本立てを行っていたので、今回もそれを継続することとした。
普通スタイルだが、現代の複雑化・高難度化した技術体系において、そちらの方向で突き詰めるのは難しいと判断した。
そこで、既存の技を発展させた新技術を開拓することを決めた。
その中でコブラに最も可能性を感じ、試行錯誤の末に掌側で薬指を曲げて行うコブラを思いついた。
この技を軸に、Itezaさんの助言を頂きつつその前後の組み立てを少しずつ構築していき、最終的にこのオーダーに辿り着いた。
撮影には死ぬほど苦労した。導入の123スプレッド、パームスピン、NeoSA233、薬指コブラ、人差し指コブラ、〆にキューブ。
いずれも単体ならまあできるかなという難易度のトリックだが、全部いっぺんに行うことで超絶運ゲーと化した。
合計何時間撮影したかは検討もつかない。
スタンディングの方はかなり理詰めでオーダーを組んだので、機会があればどこかでプロセスを話してみたいところ。
普通スタイルはItezaさんに、スタンディングはKayさんに監修して頂くという、
豪華すぎるアドバイザーに支えられたおかげで最終的にはどうにか納得のいくものが撮れた。
・bonkuraさん
PSN 5th本編を視聴された方は、彼の登場に驚かれたことと思う。
この動画はPSN 4thの初稿だった動画で、その後差し替えを行ったものがPSN 4thに使われた。
全体の流れはほぼ同じだが、細かいところに差異がある。
完成度的にはどちらも遜色ないが、個人的には前半のインフィニティに入るまでの動きはこちらの方がむしろ好きだったので、
何らかの形で使わせて頂きたいとずっと考えていた。
こうした形でbonkuraさんの未公開動画を現代に蘇らせることができただけでも、このPSN 5th -The LEGACY- には価値があったと思う。
ちなみに、私からbonkuraさんに入るまでの流れをPSN 4thとあえて全く同じにしたのはKayさんの案だ。確かにこの展開にして良かった。
・aki-maru(-ω-x)さん
PSN 3rd、4thに続き3回目の出演だ。
彼の持ち味の疾走感溢れるペン回しは健在である。
がおさん同様、ペンをお持ちでなかったためケイリミ赤を贈らせて頂いた。
大臣、がおさん、あきまるさんと、スタイルの異なるお三方でも改造いらずでそのまま使えるケイリミのオールラウンドぶりが伺える。
・Erirorさん
オランダを代表する世界トップスピナーの一人にして、World Tournament 2007を共に戦った戦友だ。
当時で既に世界二位という輝かしい成績を残しながら、そこから15年経った現在でもなお一線級で活躍するという凄まじい経歴だ。
今回の動画では、月日を経て研ぎ澄まされた技術を見せてくれた。
難易度の高い組み立てでありながらそれを意識させない圧倒的な技の美しさは、まさにベテランの味と言える。
・s777さん
フランスが生んだ世界最高峰のスピナーであり、World Tournament 2011の優勝者である。
規格外の技術力と独創性をもって2010年前後のペン回し界を席巻した。
「世界最強のペンスピナーはMenowa*さんかs777さん」とはKayさんの言である。
実は彼は前回の企画倒れとなったPSN FINALに出演を頂く予定だったのだが、この動画はその時に撮影して下さったものだ。
とはいえ彼は既に引退された方であり、コンタクトも一筋縄ではいかなかったが、
様々な手段を尽くしてようやく連絡を取ることができ、本作への動画使用も快諾して下さった。
・Martさん
Martさんは、私が審査員を務めた2010年ナランハペン回しフェスティバルの優勝者だ。
優勝のMartさん、準優勝のKayさん(当時はKateさん)のお二人をPSN FINALにお誘いしていたのだが、今回こうした形で実現できて良かった。
今回披露して頂いたように、指を大きく曲げながら技を繰り出すスタイルが一番の特徴で、
確かな技術に裏打ちされたその独創性は唯一無二の個性だ。
・플러스펜T(PluspenT)さん
私がペン回しに深く携わっていた2005~2007年当時、世界のトップを走っていた国は何といっても韓国だった。
その中でも私が最も好きなスピナーの一人であり、Superhandzにも出演経験のある、世界的にもレジェンドの一人と称して差し支えないだろう。
彼とは一生で一度でも共演できたら良いな、と当時思っていたのだが、まさかPSNに出演して頂ける日が来るとは夢にも思っていなかった。
ガンマンを多用する特徴的なスタイルが持ち味だが、この現代にそれを再び見ることができて感激だ。
・Gollumsk8さん
フランスペン回し界の大ベテランであり、彼もまたWorld Tournament 2007の戦友だ。
2021年に私がペン回しを再開したとき、彼とErirorさんが現役で活動していることには驚かされた。
Erirorさんとはまた違った方向に技術が研ぎ澄まされており、動画を観れば観るほどとんでもないことをしていることに気付かされる。
Gollumsk8さん、Erirorさん両名は何としてもこの企画にお呼びしたかった。
お二方とも快諾して下さり、そして最高の技術を見せてくれてたことには本当に感謝しかない。
・Lostさん
初期~中期のJapEnに、出演者や裏方として深く関わっていた日本ペン回し界の偉人の一人だ。
現在は高品質インサート・アウトサートを制作するLostexブランドでも有名だが、
スピーディーに安定した技を繰り出していく彼のペン回しスタイル自体にもファンは多い。
今回も往年の技のキレは健在であった。
また、今回私がスタンディングで回したペンは彼がPSN用に特別に作って下さったものだ。
こんな素晴らしい物を制作して下さって本当にありがとうございました。FINALでも使わせて頂きます。
・cirさん
2005年~2006年、日本ペン回し界のエースといえば彼だった。
誰にも真似のできない技の切れ味でJapEn 1stやPSN 2ndのトリを担当した。この2作において彼が後世に残した影響は大きい。
今回の動画はまさしく皆が憧れた当時のcirさんそのもので、ブランクをものともしない華麗な技の数々を魅せてくれた。
やはり彼は天才としか言いようがない。
・ayshさん
師匠である。前作PSN 4thを含め、私と彼の共演はこれで5本目となる。
HIDEAKIさんと共に日本ペン回し界の礎を築いた大偉人であり、元祖Dr.GRIP使いとしてもそのご高名は色褪せない。
多方面でご活躍されるお忙しい方だが、PSNの締めくくりとなる本企画にayshさんは欠かすことはできないと考え、出演を強く依頼させて頂いた。
やはり彼のペン回しは構成が丁寧で、動画全体が引き締まる。
CV出演時にトップバッターやラストに配置されることが多いのはその辺りも関係していると思う。
・Sunriseさん
PSN 5th -The LEGACY- のトリを務めたのはSunriseさんだ。
日本ペン回しの黎明期を支えた偉人の一人で、JapEn 1stで見せた赤青鉛筆マルチプル13.5回転はもはや伝説として語り継がれている。
マルチプルも凄いが、JapEn 2ndでもトリを務めるほどに普通のスタイルもかなり上手い。
こちらの動画は2010年当時のPSN FINAL用の動画であったが、今見ても遜色のない完成度の高さだ。
ちなみに、私はcirさんやSunriseさんと同い年(1990年度生まれ)なのだが、技術面においては彼らに叶うべくもなかったので、
私は企画屋としての道を進まざるを得なかった。私のスピナーとしての方向性を決めたのは実質的にこのお二人なのだ。
年月を経て、彼らとこうして新たな動画を作ることができて感激だ。
続いて、制作委員会やスタッフへのコメントに移ろう。
・Itezaさん
このPSN最新作を制作するにあたり、協力者を得なければならないと考えた中で、最初に声をかけさせて頂いたのがItezaさんだ。
彼の動画制作に関する様々なアイデアは常に斬新かつ地に足が付いたものだった。
また、動画編集者としてもその手腕を遺憾なく発揮して下さった。
彼がいなければPSN 5th -The LEGACY- は確実に存在し得なかった、それほどの存在だ。
・Kayさん
Itezaさんに次いで声をかけさせて頂いたのがKayさんだった。
世界初のペン回しプロパフォーマーとしてご活躍されているだけあって、Itezaさんとはまた違った視点をお持ちであり、
彼の話はふとした雑談から動画制作のアイデアに至るまで、実に興味深く刺激に溢れていた。
有難くも私のスタンディングスタイルをきっかけとして彼のパフォーマーの歩みが始まったとのことであり、
そんな彼と一つの企画を進めることができたのは感慨深いものがある。
・Fumiyaさん
OP映像の制作に加え、動画編集補助や、JEBとのコラボに関する企画進行を担当して下さった。
彼が企画したJapEn 15thはここ十年ほどで最も素晴らしいペン回しビデオだと思う。そんな彼と一緒に作品を作ることができて光栄だ。
PSNに対する熱い想いを持ち、エネルギーとバイタリティに溢れる方で、
彼の動画制作に関するお話は大いに参考になり、また大いに私もやる気が漲った。
・Wabiさん
OP映像制作、特にモーショングラフィックに関してご協力頂いた。
彼の作業のほぼ全てはFumiyaさんとタッグで行って頂いたので、私自身は彼と一度しかお話ししていないが、
実に多才かつ頭の回転も速い方だった。
彼のような多方面に強みがある若い方がいる限り、ペン回し界の未来は明るいだろう。
・Ren Suzumotoさん
ロゴデザインを担当して下さった。
以前のロゴ(PSN 4thの冒頭で出てくるもの)は、高校生時代の友人(美術大学志望)に描いてもらったものだが、
今回の5th制作にあたり、このロゴを一新することにした。
ロゴは企画の顔となる存在であり、妥協することはできない。
そこでプロのモーションデザイナーとしてご活躍されているRen Suzumotoさんに依頼した。
要望は「PSNのアルファベットを使うこと」「次回作のPSN 6thで制作を終了するため、"6"の要素を盛り込むこと」の2点だった。
そこで考えて下さったのが今回のロゴだ。6の要素は、ロゴタイプが6つのセグメントから構成されているという方法での解決であった。
この解決策は目から鱗で、流石プロと言わざるを得ない素晴らしい発想だった。
・Yu_Asahinaさん
楽曲制作を担当して下さった。
今回のPSN 5thの出演メンバーリストアップが完了した時、人数の多さが課題となった。
出演者は17名、しかも私が2人分なので動画は18枠。どうしても動画全体が相当に長くなることは目に見えていた。
この問題を解決するためItezaさんから提案されたのは、PSN 2ndや4thのように2曲を使うのはどうか、という案だった。
Itezaさんはいつも素晴らしいアイデアを提案して下さる。確かにこれならPSNらしさが出るだけでなく、動画が長くても飽きにくい。
加えて、私からは「転調をすること」「長調と短調を盛り込むこと」「最後はメジャーコードで終わること」の3点を希望した。
曲中の展開にバリエーションをつけることで動画の長さをカバーすること、動画の視聴後感に爽快感を出すことを意図した要望である。
この難しい要求に対し、ほぼ完璧な形で応えて下さった。
本当に無茶を言って申し訳ありませんでした。素晴らしい楽曲をありがとうございました。
・総評
思いの丈を書き連ねた結果、非常に長い文章になってしまった。
とにかく、これだけ素晴らしいメンバーが集まって下さったことにはただただ感謝するしかない。
私自身、去年久しぶりに復帰して実感したが、ペン回しの撮影というのはものすごく手間がかかる。
ペンを用意し、撮影環境を用意し、オーダーを考え、数十分~数時間をかけて撮影するというのは、途方もない労力だ。
撮影から離れて久しい人間にとっては尚更だ。
それにも関わらず、全員が力を尽くして撮影をして下さった。
出演者の方々、PSN制作委員会のItezaさん、Kayさん、
素晴らしい楽曲を提供して下さったYu_Asahinaさん、動画制作にご協力を下さった方々、
そして動画を観て下さった全ての皆様に心より感謝を申し上げます。
本当にありがとうございました。
本編のプレミア公開、直後の生放送、その後の同窓会(出演者・スタッフ打ち上げ)、本当に楽しかったです。
一生残るほどの良い思い出になりました。
PSNシリーズは次回作「PSN 6th -The FINAL-」をもって終了となります。
最後までお楽しみに。